生成AI導入の稟議で、避けて通れないのがROI(Return On Investment, 投資利益率)の説明です。

「効果はありそうだが、数字でどう説明すればいいのか分からない」

このような相談を受けたとき、私たちがまず確認するのは、対象業務の効果が「時間削減」で測れるものか、そうでないかです。

生成AI導入のROIが説明しにくいのは、効果のすべてを時間削減という単一の物差しで測ろうとしてしまうからです。

時間削減で測れる業務もあれば、時間ではなく質や機会の変化で測るべき業務もあります。

本記事では、ROIを説明しやすい指標としにくい指標に分け、決裁者が納得する組み立て方を解説します。

なお、PoCの評価基準の作り方については、以下の記事もあわせてご参照ください。

※関連記事:バックオフィス業務の生成AI活用、着手すべき順番の見極め方

ROI説明が難しくなる理由

生成AI導入のROIが説明しにくくなる最大の理由は、効果の性質が業務によって異なるからです。

請求書の内容確認のように、作業時間そのものが短縮される業務は、削減時間×時給という単純な計算で説明できます。

一方、企画書のたたき台作成のように、時間は多少しか変わらなくても、たたき台の質が上がり、次の工程がスムーズになる業務もあります。

この2つを同じ物差しで測ろうとすると、後者の効果は「よく分からないが良くなった気がする」という曖昧な説明にしかなりません。

決裁者が求めているのは、感覚の話ではなく、再現性のある説明です。

指標を2種類に分ける

ROIの指標は、次の2種類に分けて組み立てると説明しやすくなります。

コスト削減型

作業時間や処理件数など、削減された分をそのまま金額に換算できる指標です。

価値創出型

ミスの減少、対応スピードの向上、次工程への引き継ぎやすさなど、金額に直接換算しにくいが、業務の質に関わる指標です。

コスト削減型は稟議で説明しやすく、価値創出型は説明しにくいという傾向があります。

だからといって、価値創出型を諦めて省略する必要はありません。

価値創出型を数字に近づける方法

価値創出型の効果は、完全に金額換算できなくても、件数や割合という形で数字に近づけることができます。

たとえば「ミスの減少」であれば、月あたりの差し戻し件数や、修正にかかった時間の推移を記録すれば、金額ではなくても比較可能な数字になります。

「対応スピードの向上」であれば、問い合わせから一次回答までの平均時間を、導入前後で比較すれば、体感ではなく数字として示せます。

重要なのは、導入前の数字を記録しておくことです。

導入後に「良くなった気がする」と言っても、比較する基準がなければ、決裁者は納得できません。

PoCの結果を稟議の数字に変える

PoCを実施した場合、その結果はそのまま稟議の数字として使えます。

修正が必要だった出力の割合、処理にかかった時間の変化、対象業務の担当者が確認作業に慣れるまでの期間は、いずれもPoCの過程で自然に記録できる数字です。

これらの数字を、導入前の状態と並べて示すだけで、コスト削減型・価値創出型の両方について、再現性のある説明になります。

PoCを飛ばして本展開を提案すると、比較する基準がないまま「効果がありそうだ」という説明にしかならず、決裁者の納得を得にくくなります。

まとめ

生成AIのROIは、時間削減という単一の物差しだけで説明しようとすると行き詰まります。

コスト削減型と価値創出型に分け、価値創出型についても件数や割合という形で数字に近づけることで、決裁者が納得できる説明になります。

導入前の数字を記録しておくことが、この説明の土台になります。

ROIの組み立て方に迷う場合は、生成AI導入支援のページからご相談ください。

対象業務の選び方から見直したい場合は、以下の記事もご参照ください。

※関連記事:バックオフィス業務の生成AI活用、着手すべき順番の見極め方

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