AWS Backupでは、Amazon S3に対してPITRと定期バックアップの2種類を利用できます。どちらもデータを保護する仕組みですが、復元できる時点と保持できる期間が異なります。

この記事では、2つの方式の違いと、併用する場合の考え方を整理します。

PITR・定期バックアップ・併用方式の違い

AWS Backup for S3の前提

AWS BackupでS3バケットを保護するには、S3バージョニングを有効化する必要があります。

初回バックアップでは、バックアップ開始時点でバケット内に存在するオブジェクトが対象になります。現行バージョンに加え、旧バージョン、削除マーカー、ライフサイクル処理待ちのオブジェクトも含まれます。

オブジェクトの最終更新日が古いことは除外条件ではありません。長期間更新されていないオブジェクトも、バケット内に存在すれば初回バックアップに含まれます。

PITRとは

PITRはPoint-in-Time Recoveryの略称です。最初にフルバックアップを取得し、その後のオブジェクト作成、更新、削除、タグ変更などを継続的に追跡します。

直近最大35日間の範囲から復元時刻を指定できるため、次のような用途に向いています。

  • 誤操作の直前へ戻したい
  • 障害発生直前の状態を復元したい
  • 日次バックアップより短いRPOが必要

35日は個々のオブジェクトの保存期限ではなく、選択できる復元時刻の範囲です。更新されていないオブジェクトが35日後に自動削除されるわけではありません。

定期バックアップとは

定期バックアップは、決められたスケジュールでスナップショット形式の回復ポイントを作成します。AWS Backupでは、毎時、12時間ごと、日次、週次、月次などの頻度を設定できます。

S3の定期回復ポイントは最長99年間保持できるため、次のような用途に適しています。

  • 月末や年度末の状態を長期保存したい
  • 監査や社内規程に従って回復ポイントを保持したい
  • 35日を超える復元期間が必要

一方、月次バックアップでは月次回復ポイント間のすべての状態を長期保存できません。短期間だけ存在し、次の月次バックアップより前に削除されたオブジェクトは、PITRの期間を過ぎると復元できない可能性があります。

PITRと定期バックアップは併用できる

同じS3バケットにPITRと定期バックアップを設定できます。両方のバックアップは同じバックアップボールトに配置する必要があります。

併用時には、定期スナップショットがPITRの継続的な回復ポイントから作成されます。そのため、定期バックアップのたびにバケット全体を再スキャンする必要がありません。

PITRと定期スナップショットはデータ系統を共有するため、両方式の保管容量をそのまま足した二重保管にはなりません。ただし、長期スナップショットが過去のデータを参照している間は、その履歴分の保管料が継続します。

EventBridgeの設定は必要か

PITRでは、S3の変更を追跡するためにAmazon EventBridgeが使われます。

PITRを有効にすると、AWS BackupはAwsBackupManagedRule-*という管理ルールを自動作成します。利用者が同等のルールを一から作成する必要はありません。

ただし、次の設定は必要です。

  • S3バケットのAmazon EventBridge通知を有効化する
  • AWS BackupのIAMロールに管理ルールの操作権限を与える

EventBridge通知が無効になると、既存の回復ポイントは保持されますが、その後の変更がPITRへ反映されません。明確なバックアップジョブ失敗が発生しない場合もあるため、設定状態を監視する必要があります。

方式の選び方

要件適した方式
障害直前など、細かな時刻へ戻したいPITR
35日を超えて回復ポイントを残したい定期バックアップ
月末時点などを長期保存したい月次などの定期バックアップ
短期の細かな復旧と長期保持を両立したいPITR+定期バックアップ

月次バックアップが適切かどうかは、規程が「月末時点を保持する」ことを求めるのか、「期間内に存在したすべてのデータを復元可能にする」ことを求めるのかで変わります。

最終的には、RPO、RTO、保持期間、復元テストの要件を整理して決定します。

まとめ

PITRは直近最大35日間の細かな復元、定期バックアップは長期間の定点保存に向いています。両方の要件がある場合は、PITRと月次などの定期バックアップを併用する構成が候補になります。

ただし、PITRと月次バックアップを併用しても、月次回復ポイントの間に発生したすべての変更を長期保存できるわけではありません。必要な復元粒度を確認した上で頻度を決めることが重要です。

次の記事では、バックアップ保管料だけでは見えにくいS3リクエストやEventBridgeなどの料金を整理します。

関連記事: AWS Backup for S3の料金を解説|PITR・定期バックアップ・保持期間

参考資料

本記事は2026年9月14日時点のAWS公式情報をもとに作成しています。

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