アジャイル開発という言葉を聞く機会が増えてきた中で、

「気づいたらそのプロジェクトに関わっていた」という非エンジニアの方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、スクラム、スプリント、ふりかえりなど、

開発チームの専門的な用語や進め方に戸惑いを感じることもあるはずです。

本記事では、アジャイル開発の中で“巻き込まれる側”になりがちな非エンジニアが、どう関わればチームに貢献できるかをわかりやすく解説します。

こんな方におすすめ

  • アジャイル開発に初めて関わる企画・営業・デザイナーの方
  • チームの中で何を求められているか分からず不安な方
  • 開発の流れを理解し、もっと建設的に関わっていきたい方

アジャイル開発は、エンジニアだけのものではありません

非エンジニアの立場からこそ発揮できる価値が、チームの成功を支えることもあります。

1. 「アジャイルって開発の話でしょ?」と思っていませんか?

「アジャイル開発」と聞くと、多くの方が「エンジニアが使う開発手法」だと思うかもしれません。

たしかにアジャイルはもともとソフトウェア開発の現場で生まれましたが、

今では開発以外の職種や部門にも関わりが広がっているのが実情です。

たとえば営業、企画、マーケティング、サポートなど、

あらゆる職種の人がアジャイルチームの一員として関わる場面が増えています。

実は“非エンジニア”ほどアジャイルに深く関わることになる

アジャイル開発では「顧客の課題を素早く解決すること」がゴールです。

そのためには、エンジニアだけでなく、顧客に一番近い人の声がとても重要です。

たとえば、営業やカスタマーサポートが持っている現場のリアルな課題感は、

開発の優先順位を決めるうえで大きなヒントになります。

また、企画やマーケティングのように、

ビジネスサイドでアイデアを出す人の関与があることで、

プロダクトの方向性がぶれずに進められるというメリットもあります。

巻き込まれたときに“何をすべきか”を知っておくことが重要

とはいえ、突然アジャイルなプロジェクトに「巻き込まれた」とき、

「何をしたらいいのかわからない」と戸惑う方も少なくありません。

重要なのは、アジャイルチームにとって自分がどんな価値を提供できるかを知ることです。

そのうえで、専門用語に振り回されず、役割を果たしていくためのポイントを押さえることで、

非エンジニアでも自然にアジャイルに貢献できるようになります。

2. アジャイル開発で“巻き込まれる”非エンジニアとは?

アジャイル開発はエンジニアだけの話ではありません。

実は非エンジニアこそ重要な役割を担う場面が多く

「開発チームの外にいるから関係ない」とは言い切れないのが現実です。

ここでは、アジャイル開発において非エンジニアが“巻き込まれる”具体的なケースについて解説します。

プロダクトオーナーや顧客役として関与するケース

アジャイル開発の現場では、開発チームと同じくらいプロダクトオーナー(PO)や顧客役の存在が重要です。

ビジネス側の立場から優先順位を決めたり、求める価値を明確に伝えたりする役割を担うため、

非エンジニアの方がこのポジションに立つこともよくあります。

たとえば、事業責任者やプロダクトマネージャーがPOとして参加し、

開発チームとの意思疎通をリードするケースも少なくありません。

業務要件のヒアリングやフィードバックを求められる立場

新しい機能を作るには、現場の業務を理解している人からの具体的なヒアリングやフィードバックが不可欠です。

このとき、実際に業務を行っている部門や関係者が巻き込まれることになります。

たとえば、総務や経理、オペレーションチームなど、

「専門知識を持つ社内のキーパーソン」が定期的にレビュー会に呼ばれることもあります。

アジャイルは小さく作ってすぐ試すスタイルなので、素早いレスポンスや判断も求められるようになります。

マーケ・営業・企画・カスタマーサクセスなど社内の多くが該当

アジャイルチームが扱うプロダクトやサービスは、社内のさまざまな部門と関係しています。

そのため、マーケティングや営業、企画、カスタマーサクセスといった顧客接点を持つ部門も巻き込まれる対象です。

ユーザーの声や競合動向、キャンペーンの影響など、

開発チームだけでは見えない情報を共有することが、プロダクトの価値向上につながります。

特に、アジャイルでは短いサイクルで継続的に改善を繰り返すため、

各部門のフィードバックを“早く・正確に”届けられる体制が成功の鍵となります。

3. 非エンジニアが担う役割は「要望を出すこと」ではない

アジャイル開発に関わる非エンジニアの方が誤解しやすいのが、

「自分の役割は要望を出すこと」「開発チームに指示を出せば終わり」

という考え方です。

しかしアジャイルの現場では、そのような一方通行の関わり方ではうまくいきません。

求められるのは、「どう作るか」よりも「なぜ作るのか」に責任を持つ姿勢です。

単なる指示係ではなく“価値の定義者”になることが求められる

アジャイルでは、価値に基づいた開発の優先順位付けが非常に重要です。

その際に非エンジニアの役割は、開発チームに「これを作って」と指示することではなく、

「どんなユーザー価値があり、なぜそれが今必要なのか」を伝えることです。

開発チームはその情報をもとに、どう実装するかを判断していきます。

つまり、非エンジニアは“価値の定義者”としてチームの意思決定に大きな影響を与える存在になります。

もし「こういうボタンをつけて」といった指示レベルの話ばかりしてしまうと、

開発チームとの対話が浅くなり、プロダクトの本質的な価値が見失われてしまうリスクがあります。

「どう作るか」より「なぜ必要か」に責任を持つ視点

アジャイルの特徴の一つは、「作る」こと自体が目的ではなく、

本当に必要なものを見極めて改善を繰り返すことに価値があるという点です。

だからこそ、非エンジニアに求められるのは

「なぜこれが必要か」「どんな課題を解決したいのか」といった背景や意図を、

自分の言葉で語れるようにすることです。

「その機能でユーザーがどう助かるのか」

「この改善によって社内業務がどう効率化されるのか」

そうした“目的”に責任を持つ意識が、開発チームにとっての大きな道しるべになります。

4. まずやるべきこと① 目的やゴールを自分の言葉で語れるようにする

アジャイル開発において、非エンジニアの立場で最初にやるべきことは

「このプロジェクトは何のためにやるのか」を自分の言葉で語れるようにしておくことです。

これは、いわゆる「要件定義」とは異なります。

技術的な仕様や機能のリストではなく、背景にある課題や達成したい理想の状態を明確にすることが求められます。

“このプロジェクトで何を実現したいか”を明確にする

たとえば、「お問い合わせフォームを改善したい」という要望があるとします。

このときに重要なのは、「フォームのUIを変える」ことがゴールなのか、

「問い合わせ対応の効率を上げたい」「コンバージョン率を上げたい」など、

本来実現したいことを言語化できているかという点です。

アジャイルでは、開発チームが最初から完璧なものを作るのではなく、

目的に向かって少しずつ試しながら改善していく進め方が基本です。

だからこそ、「何を目指しているのか」がブレてしまうと、

チーム全体の判断や優先順位があいまいになり、進めづらくなってしまいます。

要件を細かく出すより、“背景と期待”をチームと共有する

「このボタンは青にして」「ここにチェックボックスを追加してほしい」

といった細かい要望は、最初の段階では必要ありません。

むしろ、「なぜそう思ったのか」「何に困っているのか」といった

背景と期待をしっかり伝えることのほうが、アジャイル開発では重要です。

たとえば、「営業から『問い合わせ内容が曖昧で困る』という声が出ている」

「どのチームが対応すべきか、初期振り分けができていない」など、

現場のリアルな課題感をチームと共有することが

プロダクトの本質的な改善につながっていきます。

5. まずやるべきこと② フィードバックの準備とタイミングを意識する

アジャイル開発では、完成品を一度に作りきるのではなく

作っては試し、改善を重ねるというプロセスを大切にします。

だからこそ、非エンジニアのフィードバックが重要な役割を果たします。

プロダクトを正しい方向へと導くために、「何を伝えるか」「いつ伝えるか」

あらかじめ意識しておく必要があります。

プロダクトは“作りながら改善する”もの

ウォーターフォール型の開発では、仕様を最初に決めてから実装に入るため

中盤以降の変更は難しくなりがちです。

一方アジャイルでは、「完璧な仕様」ではなく「実際の利用シーン」を見ながら

プロダクトを育てていきます。

その際、実際に触ってみた印象や、「こう使う予定だったけれど違った」など

生のフィードバックが非常に価値ある情報になります。

「もう少しこうしてほしい」「違和感がある」といった

率直な声が早い段階で届くことが、結果として開発の質を高めていくのです。

レビューの場で「見て」「伝える」準備ができているかが重要

アジャイルでは、1〜2週間の短い単位で開発を区切るスプリントを繰り返します。

各スプリントの終わりには成果物をレビューする場が設けられます。

このときに大切なのは、「忙しくて見ていなかった」「まだ考えていない」という状態ではなく

事前に内容を把握し、何を見て何を伝えるかの視点を持って臨むことです。

「この仕様でユーザーの課題は本当に解決されるのか?」

「現場でこの機能はどう受け止められるか?」

といった観点から意見を伝えることで、開発チームにとっては大きなヒントになります。

レビューの時間は限られています。

その場で思いついたことを口にするのではなく、意図を持って参加することが

プロジェクト全体の質を高めることにつながっていきます。

6. まずやるべきこと③ プロセスに継続的に関わる覚悟を持つ

アジャイル開発では「任せっぱなしにする」ことが通用しません。

一度要件を伝えて終わり、ではなく、継続的な関与こそが成果を左右する鍵になります。

非エンジニアの立場であっても、プロダクトの価値を最大化するためには

自ら関わり続ける覚悟が求められます。

アジャイルは“途中で関わらないとズレる”仕組み

アジャイル開発は、要件や仕様が変化する前提で進みます。

最初にすべてを決めきるのではなく、走りながら最適解を探していくという考え方です。

そのため、関係者が途中で関与しなくなると、意図や期待が正しく伝わらず

「なんか思ってたのと違う…」というズレが生じやすくなります。

非エンジニアの視点からも、企画や業務フローの変化、ユーザーの声などを

随時チームに共有する役割が重要になってきます。

忙しい中でも、定例やふりかえりに参加する価値

「時間がないから会議は任せたい」

そう思うこともあるかもしれませんが、定例やふりかえりの場は非常に重要です。

定例ミーティングでは、開発の進捗や課題をリアルタイムで把握できます。

また、ふりかえり(レトロスペクティブ)では、開発プロセス自体を改善していく場として

非エンジニアの視点がチームを成長させる材料になります。

関わる時間は短くても、定期的な対話の積み重ねが信頼関係を築き、

プロダクトの質を高める基盤になります。

「巻き込まれる」のではなく、「関わり続ける」姿勢が

アジャイルをうまく活用する第一歩です。

7. 非エンジニアでも知っておくと役立つ用語と考え方

アジャイル開発に関わると、独特な用語や考え方に最初は戸惑うかもしれません。

ですが、ポイントを押さえておけば、必要以上に構える必要はありません。

ここでは、非エンジニアでも知っておくと会話がスムーズになる基本用語や概念をご紹介します。

プロダクトバックログ/スプリント/ユーザーストーリー

アジャイルでは、最初にすべてを決めてから作るのではなく

「やるべきこと」をリストアップし、優先順位をつけながら少しずつ進めていきます。

このやることリストがプロダクトバックログと呼ばれるものです。

この中から必要な分だけを切り出して、**スプリント(短期の開発期間)**ごとに対応していきます。

そしてタスクの単位になるのがユーザーストーリーです。

これは「誰が」「何をしたいか」「なぜ必要か」といった形で書かれる要件で、

具体的な機能ではなく、ユーザー視点で価値を伝えるのが特徴です。

MVP/ベロシティ/Doneの定義

アジャイルでは、まず最小限の機能で試すMVP(Minimum Viable Product)という考え方が重要です。

完璧を目指すよりも、まず出してみてフィードバックを受けることが優先されます。

また、開発チームの生産性を測る指標にベロシティという言葉があります。

「どれくらいの量を一回のスプリントでこなせるか」の目安となる指標です。

そして、Doneの定義(Definition of Done)も重要な考え方です。

「何をもって“完了”とするか」をチームで共通認識として明確にしておくことで

途中ですれ違いが起きにくくなります。

会話の“共通言語”を押さえておくとストレスが減る

こうした言葉をざっくりでも知っておくと、

打ち合わせやチャットで出てきたときにいちいち戸惑わなくて済みます。

すべてを深く理解する必要はありませんが、

アジャイルチームでは「言葉の定義」がチームワークのベースになります。

「知らないから口を出せない」ではなく、

少しずつでも用語に慣れておくと、関わるハードルも下がり、より建設的な議論ができるようになります。

8. 巻き込まれたからこそ得られる3つのメリット

アジャイル開発に“巻き込まれる”と聞くと、

「本業があるのに、なぜそんなに関わらないといけないのか」と感じる方もいるかもしれません。

しかし実は、積極的に関わることで得られるメリットは小さくありません。

ここでは、非エンジニアがアジャイル開発に関与することで得られる

代表的な3つのメリットを紹介します。

プロダクトが“本当に求められるもの”に近づく

アジャイルでは、実際に使う人の声がダイレクトにプロダクトに反映されます。

仕様書を渡して終わりではなく、使い手自身が関わりながら作っていくイメージです。

そのため、最終的に出来上がるものが

「なんだかズレている」と感じることが圧倒的に少なくなります。

使い手の視点が反映されたプロダクトが出来上がる。

これは組織にとっても、ユーザーにとっても大きな価値になります。

開発との連携がスムーズになり、全体最適が進む

非エンジニアが開発現場に関与すると、チーム内の会話が増えます。

「どこが重要で」「どこは後回しでもいいのか」など、

お互いに理解し合いながら進めることで、局所最適ではなく、全体最適が実現しやすくなります。

特に、営業やカスタマーサポートなど現場の一次情報を持っている人が関わることで、

「本当に必要とされている改善」が早く、確実に実装されやすくなります。

また、開発チームとの関係性が深まり、信頼関係のある協働体制が築かれるのも大きな収穫です。

「変化に強い」自分とチームが育つ実感が持てる

アジャイルに関わると、変化は前提であることに慣れていきます。

最初から完璧を目指さず、小さく作って改善する。

そのサイクルに付き合っていくことで、変化を恐れなくなります。

これは個人のマインドにも良い影響を与えます。

「なんでも最初からきっちり決めないと不安」というスタンスから、

「変わってもすぐ調整できるから大丈夫」というスタンスへと、考え方が変化していきます。

また、自分の働きかけでチームやプロダクトが良くなっていく手応えを感じることで、

仕事に対する納得感ややりがいも高まります。

巻き込まれるのは負担だけではありません。

うまく関わることで、非エンジニアにとっても

成長と貢献を実感できる貴重な機会となります。

9. 巻き込まれたら“当事者”になるのがアジャイルの流儀

アジャイル開発では、単に「関係者」として参加するだけではなく、

自分ごととして関わる姿勢が求められます。

「巻き込まれたから仕方なく対応する」のではなく、

「自分の知見がプロダクトに活きる」と捉えることで、

プロジェクトの質にも、自分の成長にも大きな違いが生まれます。

アジャイルは“誰かがやってくれる開発”ではない

アジャイルにおいて、開発チームだけが主役ではありません。

ユーザーの視点を持った非エンジニアの関与がなければ、

的外れな機能や、価値を感じづらいプロダクトが出来上がってしまいます。

ウォーターフォール型のように「仕様を投げて、あとは任せる」やり方では、

アジャイル本来の良さを引き出すことはできません。

開発はチーム全員で進めるもの。

その前提に立って関わることで、チームの一体感も生まれてきます。

主体的に関われば、あなたの知見がプロダクトの質を大きく変える

マーケティング、営業、カスタマーサクセスなど、

非エンジニアが日々接している業務には、開発側では得られない一次情報が詰まっています。

「お客様がどこで困っているか」

「現場で何が使いにくいと感じられているか」

といった情報は、機能改善のヒントそのものです。

そうした知見を、早い段階でチームに共有できるかどうかが、

プロダクトの方向性や使い勝手を左右することも珍しくありません。

「巻き込まれる」のではなく、“プロダクトを育てる仲間になる”

そんな意識で関わることが、アジャイルを成功に導く大切なポイントです。

まとめ

アジャイル開発において、非エンジニアが関わることは珍しくありません。

むしろ、多様な視点があるからこそ、良いプロダクトが生まれるともいえます。

巻き込まれて困るのではなく、自分らしい関わり方を見つけていくことが大切です。

ポイントは3つ

• わからないことは遠慮せず質問する

• ユーザーや現場視点のフィードバックを積極的に伝える

• チームに貢献できた実感を、きちんと共有してもらう

「技術に詳しくないから」と遠慮する必要はありません。

チームの一員として、主体的に学び、関わる姿勢こそがアジャイルの本質です。

→ アジャイル導入のご相談はこちら

定額制アジャイル開発サービス