ネクスト株式会社では、コーポレートドメインとしてnext.incを利用しています。
next.incは会社名と一致しており、短く覚えやすいことから、当社にとって重要なブランド資産です。一方で、2025年の更新時には478,394円の請求が発生しました。
いくらなんでも高すぎないか?
ドメインレジストラはお名前.comを利用していますが、内訳は1年更新料が387,860円、ドメインプロテクションが1,078円、さらにサービス維持調整費として合計89,456円でした。

もともと高い.incですが、毎年約48万円は高すぎる。
そこで、ドメインを維持したまま費用を抑える方法を調査し、お名前.comからCloudflare Registrarへ移管することにしました。
Cloudflare Registrarとは?
Cloudflare Registrarは、ドメインの登録・更新費用を中間マージンなしの卸売価格(原価)で提供するドメインレジストラサービスです。
上乗せなし、更新料金の増額なし、さらに追加のセキュリティ機能も提供ありだそうです。唯一の費用は、レジストリおよびICANNによって請求される費用だけです。つまり卸値原価ですね。
Cloudflareが無料でドメイン名を提供する理由
公式サイト に以下の記載があります。
ドメインレジストラは、時に、顧客を利用するために、初期登録料を低く抑えて顧客を誘い込み、失効するよりも更新する以外に選択肢がないことが多いことから更新の価格を大幅に引き上げるという手段を取ることがあります。ただし、レジストラは本質的に仲介者として機能しており、請求する価格は通常、実際に提供する価値と不釣り合いです。
なぜそれができるか?
ドメイン名の所有者を登録するために必要なのは、レジストリとの関係といくつかのコマンドをAPIに送信する能力だけです。技術的な観点から見ると、必要な労力は最小限です。
Cloudflareは、ドメインを安全に保つために、Cloudflare Registrarを提供する前に独自の社内ドメイン名registrarを構築しました。これにより、ドメイン登録を世界に提供することへの移行が比較的簡単になりました。
くわしくは公式の Cloudflare Registrarとは?を読んでみてください。
この記事では、移管を決めた理由、実際に必要だった作業、途中で発生した問題、最終的な費用差を紹介します。
以降は具体的な手順です。
全体的な作業手順
- 権威DNSをCloudflareに変更
- お名前.comでネームサーバーを変更
- ドメイン移管申請
- 承認
Route 53からCloudflare DNSへ移行する
DNSはRoute53を利用していました。
Cloudflare Registrarを利用する場合、権威DNSもCloudflareへ変更する必要があります。そのため、レジストラだけを移管し、Route 53を権威DNSとして使い続けることはできません。Route 53だとEC2やCloudFrontなどのAWSリソースに直接関連付けられるのが地味に便利だったのですが、そこだけが制約って感じですかね。
CloudflareではDNS機能を利用する際に自動で既存設定を読み込みますが、漏れがあったら困るので、Route 53のホストゾーンをゾーンファイルとしてエクスポートし、Cloudflareへインポートしました。エクスポート方法の詳細は以下の記事で解説しています。
インポート後は、Route 53とCloudflareのレコードを比較し、MX、SPF、DKIM、DMARC、ACM検証用CNAMEなどが揃っていることを確認しました。
AWS ALIASはそのまま読み込めなかった
ゾーンファイルのインポート時に、次のエラーが発生しました。
Error while parsing zone file:
dns: expecting RR type or class, not this...: "AWS"原因は、cli53が出力したRoute 53固有のAliasレコードです。
subdomain.next.inc. 86400 AWS ALIAS A xxxxxxx.cloudfront.net. xxxxxxx falseCloudflareではこの構文を解釈できないため、今回はCNAMEへ変更しました。
subdomain.next.inc. 86400 IN CNAME xxxxxxx.cloudfront.net.添付されたゾーンファイルでは、このAWS ALIASがインポートエラーの原因でした。
Cloudflare Proxyは無効に
今回はCloudflare CDNやWAFを導入することが目的ではありません。
そのため、CloudflareへインポートしたAレコードとCNAMEレコードは、原則として「プロキシ済み」ではなくDNS onlyに設定しました。
これにより、通信経路は従来どおりAWSの各サービスへ直接向かい、権威DNSの管理先だけがRoute 53からCloudflareへ変わります。
メール関連レコードを確認する
コーポレートドメインの移行で最も注意したいのがメールです。
弊社はGoogle Workspaceを利用しているため、次のMXレコードがCloudflareへ登録されていることを確認しました。
1 aspmx.l.google.com
5 alt1.aspmx.l.google.com
5 alt2.aspmx.l.google.com
10 aspmx2.googlemail.com
10 aspmx3.googlemail.comさらに、次のレコードも確認しました。
- SPF
- Google WorkspaceのDKIM
- DMARC
- SendGridのDKIMおよび検証用CNAME
- Googleのサイト所有権確認
- Microsoftの検証情報
- Slackなど外部サービスの検証用TXT
- ACMの証明書検証用CNAME
TXTレコードは同じ名前に複数登録できます。サービス検証用TXTが複数存在していても、それだけで問題になるわけではありません。
お名前.comでネームサーバーを変更する
Cloudflare側のDNSレコードを確認した後、お名前.comの管理画面でネームサーバーを変更しました。
変更前はRoute 53のネームサーバーです。
ns-xxx.awsdns-xx.com
ns-xxx.awsdns-xx.net
ns-xxxx.awsdns-xx.org
ns-xxxx.awsdns-xx.co.ukこれを、Cloudflareから割り当てられた2つのネームサーバーへ変更します。
xxxx.ns.cloudflare.com
yyyy.ns.cloudflare.comCloudflareのネームサーバーを権威DNSとして利用するには、ドメインを登録しているレジストラ側でネームサーバーを変更する必要があります。
ネームサーバー変更後は、次のコマンドで確認できます。
dig NS next.incCloudflareから指定された2つのネームサーバーが返れば、委任先の変更は完了しています。
Cloudflareのダッシュボード上では、反映前はPending、確認後はActiveと表示されます。今回は1時間も経たないうちに反映されました。
ネームサーバー変更後に確認する項目
ネームサーバーの変更後は、レジストラ移管をすぐに開始せず、まずDNS移行が正常に完了したことを確認します。
NS
dig NS next.incWebサイト
curl -I https://next.inc
curl -I https://www.next.incMX
dig MX next.incSPFなどのTXT
dig TXT next.incDMARC
dig TXT _dmarc.next.incDKIM
dig TXT google._domainkey.next.incCloudFront
dig CNAME subfomain.next.incWebサイトだけでなく、次の動作も確認します。
- 社外からのメール受信
- 社外へのメール送信
- SPF、DKIM、DMARCの判定
- 社内向けサブドメイン
- VPNや管理画面
- CloudFront配下のサービス
- ACM証明書の検証状態
- SendGridなど外部メール配信サービス
DNS移行直後は、ISPや端末のキャッシュによってRoute 53とCloudflareの応答が混在する可能性があります。
以前のDNSレコードとCloudflare上のDNSレコードが同じ内容であれば、混在しても通常はサービスに影響しません。これが、NS変更前に両者を正確に一致させる理由です。
Cloudflare Registrarへの移管はDNS確認後に行う
CloudflareのステータスがActiveになり、Webとメールの動作に問題がないことを確認した後、レジストラ移管へ進みます。
お名前.com側で行う操作は次のとおりです。
- ドメイン移管ロックを解除する
- AuthCodeを取得する
- Cloudflareのドメイン転送画面を開く
- AuthCodeを入力する
- 移管申請を送信する
- 旧レジストラから確認メールが届く
- 承認する
Cloudflareは、ドメインがCloudflareのフルセットアップでActiveになっている場合にのみ、Registrarへの移管を受け付けます。
また、Cloudflare Registrarへ移管した後は、Cloudflareのネームサーバーから他社のネームサーバーへ変更できません。将来Route 53などへ戻す場合は、レジストラ自体をCloudflareから他社へ再移管する必要があります。
移管前に確認すべき制限
一般に、次の条件に該当する場合はドメイン移管が制限される可能性があります。
- ドメイン登録から60日以内
- 前回のレジストラ移管から60日以内
- 登録者情報を変更してから60日以内
- ドメインがロックされている
- AuthCodeが無効または期限切れ
- DNSSECのDSレコードが旧設定のまま残っている
- ドメインが失効、紛争、保留状態になっている
Cloudflareも、DNSSECが旧レジストラ側で有効なままの場合や、AuthCodeが無効な場合には移管が失敗すると案内しています。
登録者情報を変更すると移管制限がかかる可能性があるため、移管直前にWHOISの氏名、会社名、メールアドレスなどを不用意に変更しない方が安全です。
実際に一度リジェクトされました。理由はお名前.comのwhois情報公開代行機能を利用していたからです。解除して再申請したら通りました。
わかりづらいですが、ドメインが移管されない場合は請求されませんので、一度移管に失敗しても再度決済を行いましょう。
実際にかかった費用
移管前のお名前.comの請求額は、次のとおりでした。

Cloudflare Registrar側の実際の移管費用および次回更新費用は、移管申請画面で確認します。

8/5現在の為替レートでは1ドル=157.45円なので、346421.49円です。131,973円安くなりました。
まとめ
ほんの2~3時間の作業で年間13万円強のコストダウンになりました。
.incドメイン以外は1回の作業でそこまで安くなりませんが、汎用TLDドメインを大量に所有している場合などは卸値で利用できるCloudflareに移管するだけでかなりのコストダウンになりそうです。ぜひ利用してみてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もしこの記事の技術や考え方に少しでも興味を持っていただけたら、ネクストのエンジニアと気軽に話してみませんか。
- 選考ではありません
- 履歴書不要
- 技術の話が中心
- 所要時間30分程度
- オンラインOK