はじめに
生成AIの業務利用が急速に進む中で、
ChatGPT と Microsoft Copilot は特に利用者の多い代表的なツールです。
一見するとどちらも「AIに質問して答えてもらう」点は同じですが、
セキュリティの観点では設計思想が大きく異なります。
本記事では、
- ChatGPT と Copilot の違いを
- データフロー(情報の流れ) という観点から整理し
- どこにリスクがあり、何に注意すべきか
をエンジニア向けに解説します。
1. まず結論:リスクの種類が違う
最初に結論を述べると、
- ChatGPT
→ 人が何を入力するか が最大のリスク - Copilot
→ AIに何を見せているか(権限・共有設定) が最大のリスク
つまり、
「どちらが安全か」ではなく
「危険になる理由が違う」
というのが本質です。
2. ChatGPT のデータフローとセキュリティ特性
図1:ChatGPT のデータフロー
データの流れ
ChatGPT のデータフローは非常にシンプルです。
- ユーザーがプロンプトを入力
- ChatGPT(LLM)がその内容をもとに応答を生成
- 応答をユーザーに返す
ユーザーが入力した情報以外を、AIが自動で参照することはありません。
セキュリティ上の特徴
- 社内ファイルやメールを勝手に読まない
- 組織内データに直接アクセスしない
- 攻撃面(Attack Surface)が比較的狭い
起きやすい事故パターン
- 社内仕様書や設計書をそのまま貼り付ける
- 顧客情報・個人情報を入力してしまう
- 非公開コードをそのまま質問に使う
→ 原因はほぼすべて「人為的ミス」 です。
3. Microsoft Copilot のデータフローとセキュリティ特性
図2:Microsoft Copilot のデータフロー
データの流れ
Copilot は ChatGPT と異なり、
Microsoft 365 と深く統合された設計 になっています。
- ユーザーが自然文で指示
- Copilot が Microsoft Graph を通じて
- Outlook(メール)
- Teams(チャット)
- OneDrive / SharePoint
- Word / Excel
を参照
- 参照結果を要約・分析してユーザーに返す
セキュリティ上の特徴
- ユーザー権限の範囲で 組織内データを横断的に参照
- ユーザーが入力していない情報も出力対象になる
- 利便性と引き換えに、攻撃面が非常に広い
起きやすい事故パターン
- SharePoint の共有設定が「全社公開」になっている
- 本来見せるべきでない資料を Copilot が要約
- 権限設計ミスにより情報が意図せず可視化される
→ AIではなく「権限・共有設計」が原因 の事故が多いのが特徴です。
4. 図で見る ChatGPT と Copilot の本質的な違い
| 観点 | ChatGPT | Copilot |
|---|---|---|
| 参照データ | ユーザー入力のみ | 組織内データ全体 |
| 主なリスク要因 | 人為的入力ミス | 権限・共有設定 |
| 被害範囲 | 個人単位 | 組織単位 |
| 攻撃面 | 狭い | 広い |
| 統制 | 難しい | 設定次第で可能 |
この表と図を合わせて見ると、
Copilot は「強力だが、設計を誤ると危険」
ChatGPT は「シンプルだが、使い方を誤ると危険」
という違いがはっきり分かります。
5. どちらをどう使うべきか
ChatGPT が向いているケース
- アイデア出し
- 技術調査
- 公開情報ベースの質問
- サンプルコード生成
→「外に出ても困らない情報」限定で使う
Copilot が向いているケース
- 社内文書の要約
- 会議議事録の整理
- Excel データ分析
- 業務メールの下書き
→ 権限設計・共有ルールを整備した上で使う
6. まとめ:AIの安全性は「設計と運用」で決まる
ChatGPT と Copilot の違いは、
AIモデルの優劣ではありません。
- ChatGPT:
「入力しなければ漏れない」 - Copilot:
「見えていれば出る」
この前提を理解せずに使うと、
どんなに高機能なAIでも事故は起きます。
生成AIは「魔法の箱」ではなく、
設計思想を持ったシステム です。
データフローを理解し、
ツールごとに正しい使い方を選ぶことが、
これからのエンジニアに求められる姿勢なのではないでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もしこの記事の技術や考え方に少しでも興味を持っていただけたら、ネクストのエンジニアと気軽に話してみませんか。
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