BI(ビジネスインテリジェンス)を活用しようとすると、最初にぶつかるのが「聞き慣れない用語が多すぎる…」という壁です。
ETL?KPI?ダッシュボード?
意味をなんとなく知っていても、いざ説明しようとすると言葉に詰まる。そんな経験はありませんか?
この記事では、BIを使いこなすために「最初にこれだけは知っておくと得する」15の用語を厳選し、ビジネス現場の文脈でわかりやすく解説します。難しい専門知識は不要です。用語の意味だけでなく、どんな場面で役立つのかも具体的にイメージできるよう構成しています。
こんな方におすすめ
- BIの社内導入に関わっているが、専門用語に不安がある
- ベンダーとの打ち合わせで用語の意味を聞き返すことが多い
- メンバーにBIの基本を伝える立場にある
BIに関する用語を押さえておくことは、現場での理解を深め、導入後の活用スピードを上げるための第一歩です。ぜひブックマークしてご活用ください。
1. 用語でつまずくとBIがわからなくなる
BIを使おうとすると、最初に立ちはだかる壁が「聞き慣れない用語の多さ」です。
「用語が難しい」だけでBIを敬遠するのはもったいない
ETL、KPI、ダッシュボード、データソース。
初めて耳にする単語が多く、調べてもIT用語辞典のような説明ばかりで、ピンとこないという方は少なくありません。
けれども、用語の意味を知るだけでBIの理解はぐっと進みます。
むしろ難しい分析スキルよりも、まずは用語の意味と使われ方を知ることが、BIを「使いこなせる人」になる第一歩です。
実務でよく使われるものだけを厳選して解説
このシリーズでは、BIツールを導入する企業の担当者が最低限押さえておくべき15のキーワードをピックアップして紹介していきます。
実際の操作画面や社内の活用場面を想定しながら、わかりやすく解説しますので、「意味はわかっても実際の使い方が想像できない」という方にも安心して読んでいただけます。
難しく考えすぎず、「仕事の中でどんな場面で使われる言葉なのか」を意識しながら読み進めていきましょう。
2. BI導入前に押さえておきたい基本用語
BIを導入する前に、まずは最低限知っておきたい用語を確認しておきましょう。
意味があいまいなままでは、社内での議論やツール選定がかえって遠回りになってしまいます。
BI(Business Intelligence)
BIとは、企業の意思決定をデータで支える仕組み全体のことです。
レポート作成や分析といった作業のためのツールと捉えられがちですが、それだけではありません。
社内にあるデータを集約し、見える化して、判断材料として使える状態にするのが本来の役割です。
「BIツール」と呼ばれるソフトウェア群は、この仕組みを実現するための手段の一つと考えておくとよいでしょう。
ダッシュボード
ダッシュボードは、必要な指標やグラフをまとめて表示する画面のことです。
リアルタイムに近い状態で数字が確認できるため、月次の報告書や週次の会議資料の代替として活用されることが多くなっています。
BIツールの導入目的が「毎回の報告作業の効率化」であれば、まずこのダッシュボードの設計から始めるのが現実的です。
可視化(データビジュアライゼーション)
データをグラフや図表で直感的に理解できるようにすることを指します。
単なる棒グラフや円グラフにとどまらず、複数の切り口で数字を見比べたり、時間や地域による変化を動的に確認できるようにするのも可視化の一部です。
「数字を“見る”」から「数字を“読む”」へ変わるための第一歩とも言える機能です。
データソース
BIに表示する元となるデータのことをデータソースと呼びます。
例えば、基幹システム、Excel、クラウドのSaaSツール(会計ソフトやCRMなど)がこれにあたります。
導入前には「どのシステムのデータをどのくらいの頻度で連携するか」を整理しておくことが成功のカギとなります。
KPI/KGI
KPI(Key Performance Indicator)は業務の中間指標、KGI(Key Goal Indicator)は最終目標の指標です。
たとえば営業部門なら「受注金額」がKGIであり、「商談件数」や「提案書提出数」がKPIになります。
BIでは、このKPIをダッシュボードで常にモニタリングすることで、目標に向けた行動の変化を促すことができます。
これらの用語は、BIの活用シーンすべてに関わってくる基本知識です。
ひとつずつ意味をおさえながら読み進めていきましょう。
3. データの取り扱いに関する重要ワード
BIは「データをどう扱うか」がすべての基盤です。
この章では、BI導入前に押さえておきたいデータ処理関連の用語を丁寧に整理していきます。
ETL(Extract, Transform, Load)
ETLとは、データを「取り出して」「加工して」「取り込む」プロセスのことです。
複数のシステムからデータを集めて統一し、BIツールで使えるように整える重要なステップです。
具体的には、会計ソフト、販売管理、Excelなどから数値を「抽出(Extract)」し、フォーマットや単位の違いを「変換(Transform)」し、分析基盤に「格納(Load)」します。
このETL処理を自動化することで、BIは“毎回手作業でデータを整理しなくてもいい”仕組みになります。
データウェアハウス(DWH)
DWHとは、大量の業務データを蓄積し、分析しやすい形で保存するための基盤です。
さまざまなシステムの情報をひとつにまとめ、過去の情報も含めて横断的に分析できます。
BIツールで見るグラフや表は、このDWHに蓄積されたデータをもとに作られていることが多く、スムーズな意思決定の裏側にはDWHの存在が欠かせません。
データマート
データマートは、特定の部門や目的ごとに必要なデータだけを切り出した“小さな分析基盤”です。
DWHが社内全体のデータの倉庫だとすると、データマートは「営業部門用」や「経理部門用」などに特化したミニ倉庫のような存在です。
この仕組みがあることで、現場が扱いやすい単位でデータにアクセスできるようになり、不要な情報に惑わされることなく、素早く判断できるようになります。
クレンジング
クレンジングは、データの“汚れ”を取り除く作業のことです。
たとえば同じ顧客名でも表記ゆれ(株式会社ネクスト/(株)ネクスト)や、抜け漏れ(商品コードが空欄)などがあると、正しい集計ができません。
BIを活用するには、このクレンジング作業を自動化・定期実行しておくことが非常に重要です。
正しい判断には、正しいデータが前提になるからです。
リレーショナルデータベース(RDB)
RDBとは、表形式(テーブル)でデータを管理し、複数のテーブルを“関係づけて”使えるデータベースのことです。
多くの業務システムやDWHが、この形式でデータを保存しています。
たとえば「顧客テーブル」と「注文テーブル」をつなげることで、「誰が、いつ、どの商品を買ったか」といった情報を自由に集計・分析できるようになります。
BIツールもこのRDBからデータを取得して、必要なグラフや一覧をリアルタイムで生成します。
4. BIツールに関連する操作・機能の用語
BIツールには、グラフや数値を見るだけでなく、状況を深掘りしたり、視点を変えたりできる便利な機能が多く備わっています。
ここでは、初めてBIに触れる方でも使いこなしやすくなるよう、代表的な操作や機能に関する用語を整理して紹介します。
ドリルダウン/ドリルスルー
ドリルダウンは、表示された集計データをさらに細かい単位へ掘り下げて分析する操作です。
たとえば「月別売上」から「週別」「日別」へと詳細を確認する際に使われます。
一方でドリルスルーは、異なるデータセットへジャンプしながら詳細情報を取得する操作です。
商品別売上から、該当商品の在庫状況や仕入先の詳細へ遷移するなど、関連情報を横断的にたどることができます。
どちらも、画面の切り替えや新たなファイル作成をせずに「今見ている数字の背景」をその場で確認できるのが強みです。
スライサー/フィルター
スライサーやフィルターは、表示されるデータを任意の条件で絞り込むための機能です。
営業担当別や地域別など、ユーザーの目的に応じた視点でデータを抽出できます。
とくにスライサーは、ボタンのようなUIで操作できるため、非エンジニアの現場担当者でも直感的に使えるのが魅力です。
リアルタイム更新
リアルタイム更新とは、データソースの変化をダッシュボードに即時反映する仕組みです。
Excelのように手動で更新しなくても、常に最新の数値で意思決定ができます。
たとえば、倉庫の在庫数や売上速報など「今この瞬間の状況」を見たい場合に非常に有効です。
情報が常に“生きている”状態であることが、現場のスピードを大きく左右します。
セルフサービスBI
セルフサービスBIとは、IT部門に依頼せず、現場部門が自分たちでデータを分析・可視化できる仕組みです。
ダッシュボードの操作やレポートの作成、条件変更などを、プログラミング不要で行えるのが特徴です。
この考え方が浸透すれば、「使いたいのに時間がかかる」「依頼したら1週間後」といったボトルネックが減り、日々の判断が圧倒的に早くなります。
レポートテンプレート
レポートテンプレートとは、事前に定型化されたレポートの雛形です。
毎月の売上報告や週次のKPI確認など、繰り返し見るレポートはテンプレート化することで、作成の手間を大幅に削減できます。
多くのBIツールでは、グラフの種類やレイアウトも含めたテンプレートが用意されており、初心者でもすぐにレポートを作成できるようになっています。
5. よくある混同ワード・関連技術との違い
BI(ビジネスインテリジェンス)を理解するうえで、多くの方が混乱しやすいのが似た用語との違いです。ここでは特に問い合わせの多い3つのテーマについて、それぞれの違いや関係性をわかりやすく整理します。
BIとExcelはどう違う?
Excelは「個人が手作業で使う集計・分析ツール」なのに対し、BIは「組織全体でデータを活用するための仕組み」です。
Excelは柔軟に操作できる反面、手作業によるミスや属人化が起きやすく、リアルタイムでの情報共有には向いていません。
一方、BIはデータを一元管理し、最新情報を誰もが同じ条件で閲覧・分析できる環境を整えるためのツールです。
BIでは、更新の自動化や権限設定もできるため、「誰が見ても同じデータが見える」状態を保ちながら、判断や行動のスピードを上げられるのが最大の違いです。
BIとDWHの関係は?
DWH(データウェアハウス)は、BIツールが使うための「データの貯蔵庫」です。
BIはデータを集計・可視化して意思決定を支援するツールですが、その元になるデータを整えて保管するのがDWHの役割です。
たとえば、基幹システムや販売システムからバラバラに集まる情報をまとめて、分析しやすい構造に整えておくための場所がDWHです。
BIとDWHはセットで使われることが多く、DWHがしっかりしていないとBIもうまく機能しません。
導入時には、この関係性を理解した上で、どちらも適切に準備することが大切です。
BIとAIの違いと接点は?
BIは「過去と現在のデータを可視化し、判断を助ける」ツールであり、AIは「未来の予測や自動判断を行う」技術です。
BIは、KPIや実績の把握など、現状把握と行動の意思決定を支援するのが中心です。
一方でAIは、機械学習などの技術を用いて、売上予測や需要予測など未来を推定することに活用されます。
最近は、この二つを連携させた「予測付きBI」のような活用も広がっており、たとえば「今後1週間で在庫切れが発生する商品を一覧化」するといった応用も可能になっています。
BIとAIは別物ですが、組み合わせることでより高度な意思決定支援ができるようになるという点で、今後の接点はますます増えていくでしょう。
6. 用語がわかるとBIの理解が加速する理由
BIの導入をスムーズに進めるうえで、基本的な用語の理解は欠かせません。技術に詳しくなくても構いませんが、言葉の意味がわかるだけで導入時のコミュニケーションが格段にスムーズになります。
会話がスムーズになる
社内外を問わず、BIに関する会話では専門用語が自然に使われます。たとえば「KPI」「ドリルダウン」「ETL」といった言葉が出てきたときに、いちいち調べながらでは話が止まってしまいます。
あらかじめ用語を知っておくことで、議論の流れが止まらず、意思決定もスピードアップします。
ベンダーやパートナーとの意思疎通がラクになる
BIツールの導入時は、外部ベンダーやSIerとのやりとりが発生することが多くなります。その際に最低限の用語を押さえておくと、「何ができて、何が難しいか」の会話がかみ合いやすくなり、要件定義もスムーズに進みます。
逆に、用語の認識にズレがあると、実装後に「思っていたのと違う」といったトラブルの原因にもなります。
社内導入時の資料作成・説明にも役立つ
BIの導入は一人ではできません。関係者への説明資料を作ったり、業務部門への展開をしたりする中で、わかりやすい言葉で説明する力も求められます。
そのためにも、用語の意味を理解して自分の言葉で説明できるようになることは、社内推進力を高めるうえで大きな武器になります。
7. わからない用語を“放置しない”のがBI導入の第一歩
BIに触れはじめると、知らないカタカナ語や専門用語が次々と出てきます。「難しそう」「自分には無理かも」と感じる理由の多くが、実はこの用語の壁によるものです。
無理に暗記しなくてOK
BIの用語は、一度にすべて覚える必要はありません。大切なのは、わからない言葉に出会ったときにそのままにしないことです。
たとえば「ETLって何?」「スライサーってどう使うの?」と疑問に思ったら、その場で軽く意味を調べておく。これだけでBIに対する理解が格段に深まります。
何度も見返せる“用語メモ”として使おう
BI用語は、一度覚えてもすぐ忘れてしまうものも多いです。そこでおすすめなのが、よく使う用語をメモにまとめておくことです。
チームで共有してもよいですし、パワポ資料の末尾に載せておくのも有効です。導入フェーズでは社内説明やレビューの場が増えるので、「あの言葉、なんだっけ?」とならないように手元にあるだけで安心感が違います。
まとめ
BI導入や活用において、「用語を理解しているかどうか」は意外と大きな差を生みます。
この記事で紹介した15のキーワードは、ツールの設定やベンダーとの会話だけでなく、社内説明やメンバーへの共有にも役立つ基礎知識です。用語の意味を正しく理解していることで、やりたいことと実際の機能をスムーズにつなげることができるようになります。
特に「見るだけのBI」から「動けるBI」へと発展させたい場合、社内全体で共通言語を持つことが欠かせません。
BIの本質は“意思決定を支援すること”。その第一歩として、まずは言葉の壁を取り払うところから始めてみてはいかがでしょうか。