BIツールを導入した企業は年々増えていますが、「とりあえず入れたけど、結局あまり使われていない」

そんな状態に陥っていないでしょうか。

実はBIの効果を引き出すうえで最も重要なのは、導入後の「運用設計」です。

見える化しただけで満足してしまうと、数か月後には誰もログインしなくなる――そんなBI、意外と多いのです。

本記事では、BIの運用を現場に定着させるための考え方と実践ステップを紹介します。

こんな方におすすめ

  • BIは導入したが、使われていないと感じている方
  • 社内にBIを根づかせたいDX推進担当・情報システム部門の方
  • 定例会議や業務フローとBIをどう連動させるべきか悩んでいる方

“使い続けられるBI”には、ちゃんとした理由があります。

その理由と仕組みを、今日から一緒に考えていきましょう。

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1. 「使っているけど、使いこなせていない」という課題

BIツールを導入したはずなのに、「実際には誰も見ていない」「更新だけが形骸化している」といった声をよく聞きます。

せっかく作ったダッシュボードも、見られなければ価値を生みません。

BIは「導入して終わり」ではなく、「継続的に使われる仕組みをどう作るか」が本質です。

まずは、なぜBIが“使われなくなる”のかを冷静に見つめることから始めましょう。

画面はあるけど見られていないBI、ありませんか?

グラフや表がきれいに並んだダッシュボード。

ですが実際には「誰もログインしていない」「報告資料にコピペされるだけ」になっていないでしょうか。

この状態は、“BIがある”ことに満足してしまい、活用されていない典型例です。

見られないBIは、ただの装飾にすぎません。

まずは、「このダッシュボードは誰が、いつ、何のために見るのか?」という問いを明確にすることが必要です。

BIは“仕組み”で使われてこそ意味がある

BIの本当の価値は、「見える化」ではなく「見続けられる仕組み化」にあります。

  • 毎週の会議で自然に開かれるようにする
  • 特定の業務プロセスと連動させる
  • 担当者に通知が届くよう設定する

こうした“使わざるを得ない環境”を整えることが、BI活用の第一歩です。

単発で使われるBIではなく、習慣として根づくBIへと育てるために、まずは運用の設計を見直してみましょう。

2. なぜBIは使われなくなるのか?よくある3つのパターン

BIは「導入したら自動的に使われる」ものではありません。

使われないBIには、必ず理由があります。

ここでは、多くの企業で見られる“使われなくなったBI”の典型的なパターンを3つ紹介します。

自社の状況に当てはまっていないか、ぜひチェックしてみてください。

使い方が人任せで、習慣になっていない

BIツールを導入した直後は一部の担当者が活用していたものの、

次第に「見る人は見るけど、見ない人はまったく見ない」という状況になっていませんか?

この状態ではBIが業務に根づかず、「使える人だけが使う孤立したツール」になってしまいます。

誰が、いつ、何のために見るのかが決まっていないと、BIはすぐに“特定の人だけのもの”になってしまうのです。

定例や業務と結びついていないため“使う場面”がない

「会議でも触れない」「業務の中で見る必要がない」

そんな状態では、いくらBIの画面が整っていても活用は進みません。

BIが見られるようになるだけでは足りません。

“使う理由”が業務の中に組み込まれていなければ、BIはすぐに忘れ去られてしまいます。

たとえば、定例会議でBIの画面を必ず開く運用や、

日報や報告書と連動するなど、業務との接点を明確に設計することが重要です。

更新されない・改善されない“止まったBI”になっている

最初に作ったダッシュボードがずっと放置されている。

データが古いまま更新されていない。

そんなBIが「見られなくなる」のは当然です。

使われるBIは、常に改善されているBIです。

少しずつでも「見やすくなった」「業務に役立った」という実感がないと、社内の関心はどんどん薄れていきます。

BIは一度作ったら終わりではなく、育て続けるものだと捉えることが大切です。

3. BI定着の第一歩。誰が何を見るかを明確にする

BIが使われなくなる大きな原因のひとつが、「誰が何を見るかが曖昧なままスタートしている」ことです。

目的や役割がはっきりしない状態では、BIはただの“なんとなく便利なツール”で終わってしまいます。

定着を目指すなら、まずやるべきことはシンプルです。

「誰が」「いつ」「何のために」見るのかを明確にすること。

この一点だけで、BIの使われ方は大きく変わります。

ユーザーごとに“使う目的”を具体化する

BIを使う人には、それぞれ異なる役割と期待があります。

営業マネージャーが見るべきものと、経理担当者が見るべきものは当然違います。

「とりあえず全部見せておけばいい」という考え方では、情報の山に埋もれてしまい、かえって使われなくなる原因になります。

まずは関係者ごとに「この人は何を見たいのか」「どの数字で意思決定するのか」を整理しましょう。

全員に同じ画面を見せるのは非効率

よくある失敗が、「全社共通のダッシュボードをつくって終わり」にしてしまうことです。

全員が同じ情報にアクセスできることは大切ですが、全員が同じ画面で満足できるわけではありません。

営業には営業の、経営には経営の、オペレーションにはオペレーションの視点が必要です。

用途に合わない画面は見られず、結果として使われなくなってしまいます。

ペルソナ別ダッシュボードの設計

効果的な運用のためには、「この人にはこの画面が必要」という“ペルソナ別設計”が有効です。

たとえば、

  • 営業マネージャーには今月の目標達成率と個人別実績
  • 経営層には部門ごとの収益推移とKPI進捗
  • 広報には広告効果とコンバージョン率の変化

このように、見る人が必要とする情報にフォーカスした設計がされているほど、BIは“使われるツール”になります。

4. 会議・業務フローと結びつけるのが定着のコツ

BIが定着する企業には共通点があります。

それは「BIが使われる場面が明確に決まっている」ということ。

見たい人が“気が向いたときに見る”のではなく、日々の業務や会議の中で必ずBIを開く流れがあるかどうかが、定着の分かれ目です。

せっかくのダッシュボードも、“使う理由”がなければ見られません。

BIを“運用の中に溶け込ませる”視点が重要です。

会議でBIを使う=“見る理由”をつくる

会議で紙の資料を配る習慣が残っていませんか?

そのタイミングこそ、BIを“開いて見る”仕組みに変える絶好の機会です。

たとえば週次の営業会議では、個人別の進捗グラフを全員で確認。

月次の経営会議では、各部門のKPIをダッシュボードで共有。

このように「この会議ではこの画面を見る」と決めておくことで、BIを“見ることが前提の場”に変えることができます。

日常業務の中にBIを組み込む運用例

会議以外でも、BIを開く習慣をつくることは可能です。

たとえば以下のような使い方が挙げられます。

  • 出勤後、日報の入力前に“自分の実績”を確認する
  • メールに「昨日のKPI速報」リンクを毎朝配信
  • 朝礼でその日の数値をBIから抜き出して読み上げる

業務の中に“BIを見る導線”を入れることで、自然と見る習慣が根づきます。

フロー連携で“使わざるを得ない”仕組みに

理想は、「BIを見ないと業務が進まない」状態を作ることです。

たとえば、以下のような連携を組むと効果的です。

  • 異常値が出たらSlackやTeamsに通知
  • タスク管理ツールとBIが連動して、判断材料として参照される
  • 勤怠や予算管理の承認画面にBIのサマリーが表示される

このようにBIを業務フローと結びつけることで、社員が“自然と使う”環境が整います。

5. フィードバックと改善の6. “育てるBI”の運用チームのつくり方

BIは導入して終わりではありません。

導入後に“どう運用していくか”こそが、本当の勝負です。

特定の人だけで頑張っていては、改善も活用も頭打ちになります。

BIはチームで育てるもの。そのためには、社内に運用の仕組みを組み込むことが大切です。

IT部門だけで回さない

BIの導入や開発をIT部門が担うことは多くあります。

しかし運用までITに任せきりにしてしまうと、現場とのギャップが広がってしまいます。

BIが日常業務で使われるためには、

“現場の課題を拾える体制”をつくることが不可欠です。

「作る人」と「使う人」を分断させないよう、チーム横断の連携が求められます。

利用者の声を拾う「BIアンバサダー」を設置

現場の声を届ける存在として有効なのが、BIアンバサダーのような役割です。

これは、各部署にBIを使う立場からの意見を吸い上げる“橋渡し役”を担ってもらうという仕組みです。

たとえば、

  • 営業部の中で「見づらいポイント」や「もっと見たいデータ」を集めて運用チームに共有
  • 新しく導入されたダッシュボードを試して、フィードバックを返す

こうした役割を持つ人がいることで、改善のサイクルが自然と回りやすくなります。

更新・改善の定例運用を仕組みにする

使われるBIには、更新や見直しの“定例”があります。

週次・月次のKPI更新だけでなく、「このデータ、使われている?」「もっと良くできる?」と見直す機会を定期的に設けましょう。

具体的には、

  • 月1回の「BIレビュー会議」を設定する
  • 改善提案をまとめて議題化する
  • 廃止する画面や不要な指標を定期的に見直す

このように、改善が“思いつき”ではなく“習慣”として回る状態ができていることが、「育てるBI」の基本です。サイクルを仕込む

BIが社内に定着していくかどうかは、「導入してからの動き」にかかっています。

最初から完璧なダッシュボードを作ることはできません。

むしろ、利用者の声を拾いながら改善を重ねることが、“使われるBI”に育てる最大のコツです。

BIは“つくるもの”ではなく“育てるもの”。

この視点をチームに持たせることが、運用成功の第一歩になります。

「見づらい」「使いにくい」を歓迎する文化

BI担当者にとってつらいのは、誰にも何も言われない状態です。

本当に怖いのは「使われていないのに誰も指摘してくれない」こと。

「ここが使いづらい」「もっとこうしてほしい」

そんなフィードバックを前向きに受け止める文化をつくることで、BIは進化していきます。

「不満=改善のヒント」と捉えましょう。

小さな改善を繰り返して“使われるBI”へ

一気に作り直そうとする必要はありません。

フォントサイズを見やすくする、並び順を変える、色を調整する。

ほんの少しの改善でも、使う側の印象は大きく変わります。

特に、利用者から出た要望をそのまま反映させると、「ちゃんと聞いてくれている」という信頼感が生まれます。

BIが“動いている”という実感も定着につながります。

担当者の孤立を防ぐ運用体制の工夫

多くの現場で見られる課題が、BI担当者の“孤軍奮闘”状態です。

作ってはいるけれど、相談相手もおらず、フィードバックのルートもない。

この状態では改善も継続も困難になります。

  • BI改善の場を定例で設ける
  • チーム内に「使う側の代表」を入れる
  • 経営層もレビューに関わる

こうした仕組みで運用を“みんなのもの”にすることが、長く使われるBIにつながります。

7. 定着度を測る3つの指標と運用改善への活用

BIの導入はスタートラインにすぎません。

本当に重要なのは、「実際に使われているかどうか」を把握し、必要に応じて改善を重ねていくことです。

では、どのようにして“使われているBI”かどうかを見極めればよいのでしょうか。

ここでは、定着度を測る3つの指標と、それをどう改善に活かすかをご紹介します。

利用頻度/アクセス数の可視化

もっとも基本的かつ重要な指標が、「どれくらいの頻度でアクセスされているか」というデータです。

ダッシュボードごとのアクセスログを定期的にチェックすれば、

“見られているかどうか”が一目でわかります。

特に、毎日/毎週アクセスされている画面と、月に1度も見られていない画面を区別することで、

力を入れるべき箇所と改善すべき箇所がはっきりします。

ダッシュボードごとの利用者マップ

次に重要なのが、「誰が使っているのか」という視点です。

たとえば「営業部向け」のダッシュボードが、実は経理部しか使っていないケースもあります。

利用者ごとのログや部門別の利用傾向を整理することで、

想定と現実のギャップが明らかになります。

この情報をもとに、「見る人に合った画面になっているか?」という観点で見直しを図りましょう。

“使われていない画面”の見直し判断

最後にチェックしたいのが、まったく使われていない画面の洗い出しです。

一度つくったまま放置されているダッシュボードは意外と多く存在します。

使われていない画面には以下のような共通点があります。

  • KPIが不明確で、目的がわかりづらい
  • 更新が止まり、情報が古くなっている
  • ユーザーにとって必要性がない

こうした画面は思い切って削除するか、「どうすれば使われるか?」をゼロベースで再設計することが重要です。

定着状況は数字で把握し、改善は仕組みで回す。

このサイクルを持つことが、“使い続けられるBI”を育てる土台になります。

8. 「使い続けられるBI」は、運用でつくる

BIの導入を成功させるうえで忘れてはならないのが、「運用設計」です。

どんなに優れたダッシュボードでも、使われなければ意味がありません。

使われるBIとは、仕組みと習慣で“続く状態”が作られているBIです。

仕組みで動かし、文化として定着させる

「とりあえず導入してみた」では、最初の熱量だけで終わってしまいがちです。

そうならないためには、BIが自然と使われる環境づくりが必要です。

たとえば、

  • 毎週の定例会議で必ずBIを開く
  • 現場の入力データがそのまま可視化に反映される
  • 担当者が使い方をレクチャーする役割を担う

こうした「見ないと困る」運用ルールを組み込むことで、

BIは徐々に組織にとって欠かせない存在へと定着していきます。

そして、データを見て意思決定する文化が醸成されれば、

「BIがないと不安」という健全な状態が自然と生まれていきます。

“運用設計”まで考えてこそ、BI導入の成功

多くの企業で見落とされがちなのが、運用の設計段階を最初に計画することです。

ダッシュボードを作ることがゴールではなく、

どう使われ、どう改善され続けるかまで含めて導入の設計図を描くことが重要です。

以下のような視点が欠かせません。

  • 誰が見るか、いつ見るか、どう活かすか
  • 見づらい・使いにくいという声をどう拾うか
  • 情報を更新する流れは誰がどう回すのか

これらがあらかじめ定義されていることで、「導入したけど使われない」を防げます。

まとめ

BIは単に「見えるようにする」ためのツールではありません。

“使い続けられるようにする”ための運用設計こそが、BI導入成功のカギです。

この記事で紹介したポイントをあらためて整理します。

  • 誰が何を見るかを明確にすることで、ダッシュボードが意味を持ち始める
  • 会議や業務に組み込むことで、自然と“使う場面”が生まれる
  • フィードバックを活かしながら、BIを“育てていく”視点が必要

導入して終わりではなく、「運用して、改善して、文化にする」

この考え方を持つ企業こそ、BIを真に活かせる組織になっていきます。

「とりあえず導入」から一歩進んで、

“活用されるBI”へ進化させるための仕組みづくり、ぜひ始めてみてください。

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