BIツールの導入が一般化し、多くの企業が「見える化」に取り組むようになった今、
次に注目されているのが“その先のアクション”を支援する自動化やAI連携です。
とはいえ「自動化って具体的に何をするの?」「AIと連携するってどういうこと?」
そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、BIのその先にある“動くBI”の姿をわかりやすく整理し、
どんな企業でも始められる導入ステップや、具体的なツール連携例をご紹介します。
こんな方におすすめ
- BIは導入したが「次の打ち手」が見えない方
- データ活用のスピードや自動化に課題を感じている方
- BIとAIをどう連携させればよいか知りたい方
BIは“見る”から“動かす”へ。
日々の業務にもっとデータを活かすためのヒントを、ぜひ最後までご覧ください。
1. BIだけでは“次の打ち手”が足りない時代へ
ダッシュボードで数値を“見える化”することは、多くの企業が取り組むようになりました。
ですが、「数字が見えているのに、そこから先の動きにつながらない」
そんなもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
今、求められているのは“見るだけ”で終わらないBIの使い方です。
BIは、次に進化すべきフェーズに差しかかっています。
見える化に満足していませんか?
BIの初期導入で得られる最大の効果は、「全体像が見えるようになる」ことです。
売上、KPI、業務の進捗などが一目で把握できるようになり、社内での共通認識が生まれます。
しかし、多くの現場ではこんな課題が出てきます。
- 見たあと、誰が何をするのかが決まっていない
- 異常値に気づいても、担当者に通知されない
- アクションにつながる“次の打ち手”が用意されていない
つまり、“気づき”はあるけれど“動き”が生まれない状態が続いてしまうのです。
見える化はあくまで入り口。そこから何を起こせるかが、本当に重要です。
これからは「動くBI」への進化が求められる
これからのBIに求められるのは、「見たら動ける」「動きを促す」仕組みです。
たとえばこんな流れが、これからのBIのあるべき姿です。
- KPIが基準を超えたら、Slackやメールに自動通知が飛ぶ
- レポートが自動で生成・配信され、意思決定が加速する
- 異常値や傾向変化に対して、AIが次のアクションを提案する
つまり、BIは“動かすBI”へと進化しつつあるのです。
Amazon QuickSightのような最新のBIツールでは、
通知や自動配信、AI連携といった「次のステップ」を手軽に組み込むことも可能になっています。
「見える化」から「動く化」へ。
これが、これからのデータ活用における大きな分岐点です。
3. “BIの次”に来る進化:自動化とAI連携とは?
BIはもはや「見える化のためのツール」ではなく、業務を動かすための仕組みの一部として進化し始めています。
その中心にあるのが自動化とAI連携です。
BIの先にある未来は、単なる数値の可視化ではなく、行動を促し、判断を助ける“実行可能なBI”です。
ここでは、具体的にどのような進化が起きているのかを見ていきましょう。
自動化=繰り返し作業や通知を仕組みに任せる
まず、BIと業務の間をつなぐのが自動化の仕組みです。
たとえば、毎週の数値レポートを手作業で作って配信していませんか?
異常値を見つけたとき、担当者が気づくまでに時間がかかっていませんか?
こうした課題は、BIと自動化を組み合わせることで解消できます。
- ダッシュボード上のKPIが一定値を超えたらSlackで自動通知
- レポートを曜日ごとに自動生成し、関係者に送信
- 特定の数値に基づき、ワークフローやタスク管理ツールと連携
Amazon QuickSightでは、スケジュール配信やアラート通知も標準機能で対応可能です。
「見る→知らせる→動く」の流れが、自然に業務の中に組み込まれていきます。
AI連携=データから“答えを提案する”次世代の支援
次に注目すべきは、AIを活用して“次にすべきこと”を提案する仕組みです。
BIが持つ大量のデータに対して、AIを連携させることで、以下のようなことが可能になります。
- 売上や在庫の予測をモデルに基づいて算出
- 異常値やトレンドの変化を自動検出し、アラートを生成
- ChatGPTのような生成AIが、自然言語で分析内容を説明・提案
従来は分析担当者が担っていた判断や提案が、AIの支援によって日常的に行えるようになるのです。
Amazon QuickSightも、BedrockやForecastといったAWSのAI系サービスと連携することで、こうした次世代型の活用が現実的になります。
単なるダッシュボードから“実行可能なBI”へ
このように、BIの進化は「見る」から「動かす」へ。
そして今はさらに「考えてくれる」方向へ向かっています。
- 見て終わるBIではなく、動きを生むBIへ
- 単なる可視化ではなく、判断と実行を後押しする仕組みへ
- 人が手を動かす前に、気づきと提案が届く状態へ
こうした進化は、決して大企業だけの話ではありません。
中小企業でも、クラウドBI+AI連携で、今すぐに始めることができます。
これからのBIは、「実行までを支えるツール」へと変わっていくのです。
4. 自動化でできること|ルーティン業務の置き換え事例
BIは単に数値を可視化するだけでなく、人が毎回行っていた“定型作業”を仕組みに置き換えることができます。
とくにルーティン業務を自動化することで、現場の負担を軽減しながら、意思決定のスピードを高める効果が期待できます。
ここでは、実際によくある業務を例に、BIツールによる自動化の具体的な活用方法を紹介します。
KPI異常値の自動通知 → 対応フロー起動
たとえば売上や在庫、問い合わせ件数などのKPIが急増・急減した場合、
それに気づくまでに時間がかかってしまうと、対応が遅れてしまいます。
そこで、あらかじめ基準値を設定しておき、異常値が出た瞬間にSlackやメールで自動通知すれば、
現場やマネージャーがリアルタイムに状況を把握でき、すぐに動ける体制が整います。
さらに、通知後に対応タスクを自動生成したり、チェックリストを起動したりといった連携も可能です。
Amazon QuickSightなら、しきい値アラートの設定と通知まで一括で実行できます。
レポート配信の自動スケジュール
週次・月次レポートを毎回手作業で作っていませんか?
Excelを開き、データを貼り付け、PDFに変換して送信する。
この作業がBI+自動化でゼロに近づきます。
あらかじめダッシュボードを作成しておけば、指定の曜日・時間に自動でPDFやリンク形式でレポートを配信できます。
上司やチームメンバーが“見るタイミングで届く”環境が整えば、
データが活用されやすくなり、レポート作成にかかっていた時間も削減できます。
タスク管理やワークフローとの連携
BIの価値をさらに広げるのが、外部サービスとの自動連携です。
たとえば、KPIが一定の条件を満たしたときに、
- AsanaやBacklogでタスクを自動作成
- GoogleカレンダーやTeamsに通知を登録
- 承認フローをkintoneやSalesforce上で開始
といった“BIから始まるアクション”を自動でつなげていくことができます。
QuickSightもAmazon EventBridgeなどと連携することで、通知の先にある業務ツールとの統合が可能です。
5. AI連携で広がるBIの可能性
BIは「見る」から「動かす」へ、そして今、さらにその先のフェーズとして
「考える」BI、つまりAIとの連携による次世代活用が注目されています。
これまで人が手間をかけて行っていた予測や判断も、
AIとつながることでより迅速に、そして広範囲にサポートできるようになっています。
ここでは、BIとAIの連携によって実現できる具体的な活用例をご紹介します。
予測モデルを活用した売上予測・在庫管理
売上の先行きや在庫数の推移を読み取るには、過去データの分析だけでなく、
時系列の変化をもとにした“未来予測”が不可欠です。
BIにAIの予測モデルを組み込むことで、以下のようなことが可能になります。
- 商品別・エリア別の売上予測
- 在庫が不足しそうな拠点の事前検出
- 需要予測に基づく仕入れ最適化
たとえばAmazon QuickSightは、Amazon Forecastと連携することで、高精度な予測モデルをノーコードで組み込めるため、
ITリソースに限りがある中小企業でも、“使える予測”を日常業務に取り入れることが可能です。
異常検知による早期トラブル対応
AIは「いつもと違う」を見つけるのが得意です。
定常的に蓄積されるデータを学習させておけば、人が気づきにくい変化やリスクの兆候を、早期に検知することができます。
たとえば、
- 急激なアクセス数の変動
- 特定商品の返品率の上昇
- 地域ごとの売上構成の急変化
といった異常が発生したときに、AIがそれを拾い上げ、BI上で通知やアラートを出す仕組みを作れば、
トラブルの拡大を防ぐと同時に、組織の対応力も向上します。
QuickSightでは異常検知用のビルトイン機能に加え、Amazon Lookout for Metricsとの連携により、より高度な異常分析も可能です。
ChatGPTのような自然言語での分析指示・レポート生成
今後さらに注目されるのが、自然言語によるBI操作です。
たとえば、
- 「先月の営業成績をグラフで見せて」
- 「前年比で在庫推移を比較して」
- 「次回の会議用にレポートを作成して」
といった指示を、AIがそのまま理解してレポートやビジュアライズを生成することができれば、
非エンジニアや現場スタッフでも、直感的にBIを使いこなせるようになります。
Amazon Bedrockなどを活用すれば、QuickSightと生成AIを組み合わせた自然言語UIによる分析環境の構築も可能です。
6. 具体的なツール・サービス例
BIと自動化・AIを連携させた取り組みは、すでに多くの企業で始まっています。
ここでは、代表的なBIツールと他サービスの組み合わせを紹介しながら、
どのような連携が可能なのか、実際の選定や導入の参考になる視点をお届けします。
Amazon QuickSight × Bedrock/Forecast
Amazon QuickSightは、AWSが提供するクラウド型BIツールです。
サーバーレスで導入が簡単、料金は従量課金でスモールスタートにも適しています。
Bedrockと連携することで、生成AIによる要約・提案・レポート文の自動生成など、
自然言語ベースでの分析支援が可能になります。
また、Amazon ForecastやLookoutとの連携により、予測や異常検知といった“先を読む活用”にも強みがあります。
AWS環境を利用している企業であれば、最小限の構成でAI連携までを実現できる点が魅力です。
Power BI × Power Automate
Power BIは、Microsoft 365ユーザーにとって非常に親和性の高いBIツールです。
ExcelやSharePointとの連携が容易で、社内のデータ活用を一気に加速できます。
Power Automateと組み合わせれば、レポートの配信や通知、特定条件に基づいたTeams連携やタスク作成の自動化など、業務への組み込みもスムーズです。
すでにMicrosoft製品を利用している企業にとっては、導入のハードルが低く、統合的な運用がしやすいのがメリットです。
Tableau × Einstein(Salesforce)
Tableauは柔軟性と表現力に優れたBIツールとして、データアナリスト層に人気があります。
グラフの自由度が高く、データを深掘りしたいニーズに応える設計です。
SalesforceのEinstein Analyticsと連携することで、CRMとBIがつながり、
営業活動の予測やスコアリングなど“顧客接点”に強いAI活用が可能になります。
ただし、導入や運用にはある程度のスキルが求められるため、体制やリソースが整っている企業向けです。
Google Looker × Vertex AI/BigQuery ML
Lookerは、SQLベースでのモデル設計に特化したBIで、データエンジニアと分析担当が協働する環境に適しています。
BigQueryやLookMLとの親和性が高く、大規模データを扱う企業に選ばれています。
Vertex AIとの連携により、高度な予測モデルや分類タスクをダッシュボードに組み込むことが可能です。
また、BigQuery MLで構築したモデルを直接可視化できるため、開発と運用が一体化しやすい環境が整っています。
一方で、ある程度の技術的知識を必要とするため、分析体制のある企業に向いています。
7. “見える化”から“動く化”へ進化するBI導入ステップ
BIを導入する際にありがちなのが、「見える化まではできたが、その先の活用が進まない」という悩みです。
ですが、焦る必要はありません。BI活用は段階的に成長させていくものです。
ここでは、BIを“見るだけ”の道具から“業務を動かす仕組み”へと進化させるための3つのフェーズを紹介します。
自社の現状を確認しながら、次に進むヒントを見つけてみてください。
フェーズ1:ダッシュボードによる可視化
最初のステップは、業務に必要な数字をリアルタイムで“見える化”することです。
これまでExcelで集計していたデータをBIツールに集約することで、
- 売上やKPIの推移が一目でわかる
- 最新データにいつでもアクセスできる
- 社内での共通認識が早く持てる
といった効果が得られます。
まずは「営業成績」「在庫状況」「アクセス数」など、既に日常的に使われている指標から始めるのがポイントです。
Amazon QuickSightなら、テンプレートを活用してすぐにダッシュボード化できるので、
初めての導入でも無理なく“可視化の第一歩”を踏み出せます。
フェーズ2:通知・配信による業務自動化
可視化が進んできたら、次に取り組みたいのが「通知」や「自動配信」による業務の効率化」です。
たとえば、
- 異常値が出たら、担当者に自動でアラートを送る
- 定例レポートを毎週月曜に自動配信する
- 特定の条件を満たしたときだけレポートを共有する
といった“データに気づく・知らせる”プロセスを仕組み化することで、
現場の対応スピードや業務の抜け漏れを大きく改善できます。
QuickSightは、スケジュール配信やしきい値アラートをノーコードで設定できるため、
小さな業務改善から自動化を始めやすい点も強みです。
フェーズ3:AIが提案・判断を支援する仕組みへ
自動化が定着してきたら、次に目指すのはAIを活用した“提案型BI”への進化です。
たとえば、
- 売上予測や在庫の需給バランスをAIが予測
- 過去傾向から異常パターンを検出
- ChatGPTのような自然言語で「今週の課題は?」と聞けば回答が得られる
といった、“気づき”だけでなく“考える力”をBIに持たせる段階です。
Amazon QuickSightは、Amazon ForecastやBedrockといったAIサービスとスムーズに連携でき、
判断支援やレポート生成を自動化する環境も整備しやすくなっています。
BIの役割は、単なる報告から、業務のナビゲーターへと広がっているのです。
8. これからのBI人材に求められる視点
BIの活用が“見るだけ”から“動かす”段階へ進化していく中で、
BIに関わる人材にも新しい視点やスキルが求められるようになっています。
単なるツールの操作にとどまらず、組織のデータ活用を推進する担い手としての役割が強まっているのです。
ここでは、今後のBI人材に求められる視点とスキルの変化について整理します。
データを“見せる”だけでなく“動かす”視点
これまでのBI活用では、いかにわかりやすくデータを見せるかが中心でした。
しかしこれからは、それだけでは不十分です。
- 数値の変化をどう判断するか
- どのタイミングで誰に通知を出すか
- 気づきをどう次の行動につなげるか
といった、“業務に動きを生む仕組み”を設計できる視点が重要になります。
BIツールの画面設計だけでなく、通知ルールやアクション導線まで考える力が求められるようになります。
IT・業務・AIのハブになるポジションへ
BI人材は今や、「IT担当」でも「業務担当」でもない中間的なポジションに立っています。
- データを扱うエンジニアと、現場で意思決定するマネージャーの橋渡し
- 業務の背景を理解しながら、AIや自動化の技術を現場に落とし込む役割
このようなハブ的存在こそが、今後のBI活用において欠かせない人材になります。
Amazon QuickSightのようなBIツールでは、技術的なハードルが低いため、非エンジニアでもこの役割を担いやすくなっています。
「わかる人が1人いれば全社が変わる」そんな影響力を持てるのが、今のBI人材です。
現場との連携・プロンプト設計力も重要に
とくにAIとの連携が進むこれからは、現場との対話力と“プロンプト設計力”がカギになります。
たとえば、
- 現場の課題をヒアリングし、「それってデータで解決できる?」と翻訳する力
- ChatGPTやBedrockに正確な分析指示を与えるプロンプト設計の力
といった、人とAIの橋渡しができる力がより重要になってきます。
BI人材は、単なるツールの利用者ではなく、“業務を変える提案者”として期待されるフェーズに入っています。
9. BIの次は“実行力”を備えたデータ活用へ
BI導入によって「見える化」が進んでも、実際の業務が変わらなければ意味がありません。
これから求められるのは、データをもとに“動き”が生まれ、“成果につながる”活用です。
その鍵になるのが、自動化やAIとの連携によって実行力を備えた“動くBI”への進化です。
データは見るだけではもったいない
BIを使えば、データを瞬時に可視化し、気づきや判断材料を得ることができます。
しかし、「気づいて終わり」「グラフを見て終わり」では、
せっかくのデータも活用されているとは言えません。
本当に価値が出るのは、見たあとに“動けるかどうか”です。
- 異常値に即対応できる通知の仕組み
- レポート作成や共有を自動化する運用
- AIが次の一手を示してくれる判断支援機能
こうした“実行につながる仕組み”をBIに組み込むことで、初めてデータは組織の武器になります。
自動化とAI連携で「動くBI」に進化させよう
現在のBIツールは、業務の実行までを視野に入れた拡張が可能になっています。
Amazon QuickSightのように、
- スケジュール配信やアラート通知で業務を動かす
- Amazon ForecastやBedrockと連携してAIに判断を任せる
といった“使える仕組み”が、ノーコードでも構築できる時代になりました。
つまり、BIはもう「見るだけのもの」ではありません。
通知し、提案し、動かす──そんな“実行力を持ったBI”へ進化するタイミングが、今まさに来ているのです。
データを見ることはスタートにすぎません。
そこからどう動かし、どう成果につなげるか。
“実行するBI”への一歩を、今こそ踏み出してみてはいかがでしょうか。
まとめ
BIの導入はゴールではなく、データ活用の出発点にすぎません。
“次の一手”が見えてこない、成果につながらないという悩みの背景には、
「見るだけのBI」にとどまっているという共通点があります。
これからのBIに求められるのは、意思決定や業務実行に直結する“動くBI”への進化です。
ポイントは3つ
- 単なるダッシュボードではなく、通知・自動化で“気づき”から“動き”につなげる仕組みを持つこと
- AIの力を借りて、分析から提案・予測へと発展させていくこと
- 現場とつながり、日々の仕事に自然に組み込まれる“使われるBI”をつくること
Amazon QuickSightをはじめとする最新ツールでは、こうした自動化・AI連携も現実的な選択肢になりつつあります。
データ活用において差がつくのは、「見た後、どう動くか」です。
“動かすBI”への一歩を、今ここから踏み出してみてはいかがでしょうか。