生成AIを社内に導入したいと考えても、どこから手をつけてよいか迷う方は多いのではないでしょうか。いきなり全社展開を目指すのではなく、小さな成功体験から始める「スモールスタート」が最も確実で効果的な進め方です。
本記事では、初めて生成AIを活用する企業がどのように小さく始め、着実に成果を積み上げていけばよいのかを、具体的なステップとともに紹介します。
こんな方におすすめ
- 社内で生成AIの活用を検討している方
- 小さく始めて成功事例を作りたい方
- 現場に定着する使い方を模索している方
ネクストはこれまで、500社を超えるお客様に技術で支援してきました。導入を成功させた企業に共通しているのは、「最初の1歩の踏み出し方」がしっかりしていたことです。
まずは社内の小さな課題に向き合い、生成AIが“実際に使える”ことを体感するところから始めましょう。
1. 生成AIは“いきなり本格導入”しなくていい
生成AIの活用が話題になっている今、導入を検討する企業も増えています。ですが実際には「どこから始めればいいのかわからない」「費用対効果が見えづらい」といった不安の声も多く聞かれます。
こうした不安に対して、今成果を出している企業が選んでいるのが“スモールスタート”というやり方です。いきなり全社導入を目指すのではなく、身近な業務から始めて、小さな成功を積み上げていく方法です。
成功している企業の多くは“小さく始めて、大きく育てている”
たとえば、営業部門だけで週報作成に使ってみたり、人事でスカウト文の作成に活用してみたりといった具合に、まずは「1業務・1用途」に絞って活用を開始しています。
スモールスタートで成果を出すためのステップ
導入初期に失敗しないためには、明確な目的設定と、導入対象業務の見極めが欠かせません。
ここからは、スモールスタートを成功させるための具体的なステップや、よくある活用事例を紹介していきます。
2. スモールスタートとは何か?
生成AIを社内で活用する際に、いきなり全社展開を目指す必要はありません。むしろ効果を実感しやすいのは、少人数や一部の業務から始める“スモールスタート”という進め方です。
限られた範囲・人数・目的で、リスクを抑えて始める導入手法
スモールスタートは、全体設計よりもまずは一歩踏み出すことを重視します。導入初期に求められるのは、完璧な体制ではなく“まずは触ってみる”ことです。失敗してもダメージが小さく、学びを得やすいのが特長です。
最初に「効果が出やすく」「失敗しても影響の少ない」業務に適用するのがコツ
営業週報の作成や、採用メールのたたき台づくりといった“軽めの業務”から導入すれば、業務負荷も低く成果が見えやすくなります。改善の余地が大きいルーチン業務に絞ることで「使ってよかった」という感触を得やすくなります。
例:議事録、メール文案、社内FAQなどの軽い業務から
たとえば会議の議事録作成で「録音データを文字起こしして要約」する活用や、営業担当が「顧客別にメール文案を生成」するといった事例は、すぐに実行できて効果も実感しやすいスモールスタートの典型例です。
3. どこから始める?スモールスタートに適した業務の特徴
生成AIを社内に導入するなら、最初に選ぶ業務がカギを握ります。スモールスタートの成否は、どこで試すかによって大きく変わります。
判断より“作業”に近い業務
たとえば「文章を要約する」「案内文の下書きをつくる」といったタスクは、創造や判断よりも整理や構成のほうが中心です。こうした業務は、生成AIがもっとも効果を発揮しやすい領域です。
コツを抑えたプロンプト例
あなたはビジネスメールの文案を作成するアシスタントです。以下の要件を満たすメールの下書きを作成してください。
・目的:会議日程の調整
・文体:丁寧で親しみやすく
・読者:取引先の営業マネージャー
・文字数:300文字以内
データ量が少なくても始められる業務
Excelに記録された顧客メモや会議メモ、Slackやメールの短いやりとりなどでも活用は可能です。大量のデータがなくても、「一人の業務」で完結する環境なら十分に検証ができます。
1人 or 少人数で完結する業務
周囲を巻き込まずに、1人で完結できるタスクに導入すれば社内調整も不要です。議事録の下書きや日報の作成など、すぐに試して効果を実感できる業務から始めると導入がスムーズに進みます。
4. スモールスタート成功のための5つのステップ
生成AIの導入は、いきなり全社展開を目指すよりも「まずは使ってみて成果を出す」ことが肝心です。ここでは、小さく始めて着実に効果を出すための5つのステップを紹介します。
ステップ① 使いたい業務を1つに絞る(例:営業メール作成)
最初は業務を広げすぎず、「メールの下書き」や「会議メモの要約」など、明確に効果が見えやすい業務に絞り込みます。
プロンプト例(営業メールの下書き)
あなたは法人営業のアシスタントです。以下の条件で提案メールの下書きを作成してください。
・目的:初回の商談アポイントを取る
・文体:ビジネス丁寧語で柔らかく
・相手:製造業の部長クラス
・文字数:250文字以内
ステップ② 使うツールとルールを最小限決める(無料版 or 企業向けなど)
まずは無料プランや社内で使える範囲のツールで始めてOKです。あわせて「どの業務で何をしてよいか」のルールも簡単に決めておきましょう。
ステップ③ プロンプトを工夫し、出力を試す・調整する
生成AIは「何を聞くか」で出力が大きく変わります。最初は少しずつ試して調整していくのがコツです。
プロンプトについては過去の記事も合わせて読んでみてください。 プロンプトって何?うまく出力させる入力のコツを実例で紹介
ステップ④ 効果(時間削減/作業効率など)を見える化する
AIを使う前後でどれくらい時間が減ったか、成果物の精度はどうかを簡単な指標で比較できるようにしましょう。
ステップ⑤ チーム内や上司に“成果の共有”をする
「AIを使って30分の短縮ができた」「報告書の構成が整いやすくなった」など、具体的な成果をチームに伝えることで社内展開のきっかけになります。
5. 実際のスモールスタート事例
生成AIの導入は難しそうに見えても、実際には「1人で始めて成果が出る」ケースが多くあります。ここでは企業の各部門でのスモールスタート事例を紹介します。
人事の生成AIスモールスタート事例
求人票作成をAIで自動下書き、作業時間60%削減
ある企業の人事担当者は、求人票のたたき台を毎回ゼロから作っていました。職種やトーンの条件をAIに伝えることで、初稿作成の工数が大幅に短縮されました。
プロンプト例
あなたは人事担当者です。以下の条件で求人票の下書きを作成してください。
・職種:カスタマーサポート(正社員)
・勤務地:東京本社
・特徴:未経験歓迎、研修制度あり、20代が活躍中
・文体:丁寧で親しみやすく
・文字数:400文字以内
管理部の生成AIスモールスタート事例
会議議事録の要約に活用し、残業ゼロ化
管理部門では毎週の定例会議後に議事録を作成していました。Google MeetやTeamsでの録画・文字起こし機能を使い、NotebookLMなどに要約させることで、これまで30分以上かかっていた作業が5分に短縮され、残業が不要になりました。
営業の生成AIスモールスタート事例
提案資料の構成案生成→ストーリー設計に集中できるように
営業チームでは、資料の構成を考える時間が毎回の負担でした。AIに過去の提案内容や目的を伝えて構成案を作成させたことで、ストーリーや中身の練り込みに時間を使えるようになりました。
プロンプト例
あなたは法人営業の提案資料を作成するアシスタントです。以下の条件でPowerPoint資料の構成案を作ってください。
・目的:新サービスの提案による取引拡大
・相手:製造業の部長クラス
・構成:課題提起→サービス概要→導入メリット→費用感→次アクション
・スライド数:5枚構成で提案してください
6. よくある失敗とその回避法
スモールスタートで生成AIを導入するときでも、よくある失敗を押さえておかないとせっかくの取り組みが形だけで終わってしまうことがあります。ここでは失敗しがちなパターンとその回避法をまとめました。
あれもこれもと手を広げてしまう → 最初は1業務に絞る
よくあるのが「せっかく導入したからいろんな部署で活用しよう」と無理に広げてしまうケースです。
しかし慣れないうちは混乱を招きやすく、成果も見えづらくなります。
まずは営業メールの下書きだけ、人事の求人票だけといった1テーマから始めるのが成功の近道です。
出力の使い方が曖昧 → 「たたき台として使う」ことを明確に
AIの出力をそのまま使おうとすると「期待と違った」「ズレている」という声が出てきます。
重要なのは、AIは“たたき台”であり“完成品”ではないという前提を共有することです。
チェックと調整のプロセスがあってこそ、実務にフィットする出力に育てることができます。
成果を可視化せずに終わる → ビフォー/アフターの違いを数字で見せる
「確かに便利だったけど何がどう良かったのか説明できない」となっては次に進めません。
導入前と導入後で作業時間が何分減ったか、手戻りが何件減ったかなどを具体的な数値で可視化しておくことが重要です。
この“見える成果”が、他の部署への展開や上層部の理解を得るきっかけになります。
7. まず1つ、“やってみた”が大きな一歩になる
「生成AIは便利そうだけど、まだ本格導入は不安」と感じる企業は少なくありません。しかし、いきなり全社で使おうとする必要はありません。まずは1つ、できるところから始めることが何よりも大切です。
導入に迷ったら、まず1業務・1担当者でのスモールスタートがおすすめ
たとえば営業メールの下書きや議事録の要約といった単純な業務であれば、1人の担当者だけでもすぐに効果を実感できます。IT部門の支援がなくても始められることも多く、現場主導で進めやすいのが特徴です。
成果が見えれば、自然と社内展開が進む
「週報の作成が10分で終わるようになった」「議事録の作業時間が半分になった」といった具体的な成果が出れば、その効果は自然と他部署にも広がります。上司への報告やチーム内での共有も簡単になり、全社的な導入の第一歩となります。
導入を成功させる鍵は、“完璧な準備”よりも“まずやってみる”ことです。実際に試すことで課題や可能性が見えてきます。生成AIは、小さな一歩からでも確実に業務を変えていけるツールです。
まとめ
生成AIの導入は、準備から運用まで一気に進めるのではなく、スモールスタートで着実に進めるのが成功のポイントです。
まずは日々の業務の中にある「手間」や「面倒な作業」に生成AIを取り入れ、小さな成功を積み上げることで、社内に自然と活用が広がっていきます。
初めての生成AIでは、生成AIの基礎から応用までの学習を通じて、企業や個人の生成AI導入を支援していく予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。